◆体の悩み聞いて効く 飛蚊症

目の中の硝子体の混濁が原因

網膜剥離広がると手術が必要

 【質問】先日、急に目の前に黒い点や糸状のような物が見えるようになりました。眼科でみてもらったと
ころ、網膜剥離(はくり)による飛蚊(ひぶん)症と言われました。何かで力んだときの弾みや生まれつきの
性質ではないかといわれました。幸い軽度のためレーザー治療ですみ、症状はしばらく続くが、じきに
気にならなくなるといわれました。病気の仕組みや治るまでの期間、今後の注意点などについて教えて
ください。(大阪府羽曳野市 35歳主婦)

 【回答】 飛蚊症は眼科で訴えられる症状のうちで最も多い症状のひとつです。症状の原因は目の中
の硝子体の混濁です。硝子体は水晶体の後ろで、眼球の体積の約三分の二を占める部分です。中に
はゼリー状の透明な半液体が入っています。ここに混濁が起きると、外界から光が入ったときに網膜に
影が投影され、動く黒い点とみえるわけです。

 混濁の本体にはいろいろありますが、最も多いのは硝子体の成分のひとつである、繊維が寄り集まっ
たものです。糸状のようなものという表現の由来はそこにあります。硝子体は齢を重ねるにつれてゼリ
ー状の組織が部分的に水のように液化し、中の固形成分が融合して大きくなります。これによって繊維
の寄り集まりが生じるのです。液化を促進する原因には、目のサイズが大きくなる近眼や目の外傷、出
血などがあります。

 飛蚊症と網膜剥離の関連を理解するのに大切なもうひとつの要素は、硝子体と網膜の癒着です。硝
子体と網膜は、網膜の前縁である鋸状縁(きょじょうえん)でしっかりと癒着しています。視神経、黄班
部、網膜血管などの部分でも癒着があります。

 老齢化や近視とともに硝子体の液化が進むと眼の動きに伴う硝子体の動きも大きくなり、硝子体が網
膜面から離れる硝子体剥離という状態が起こります。このとき飛蚊症は急激に多くなります。また網膜
との癒着部分に強い力が加わり、網膜に亀裂を作る場合もあります。これが網膜裂孔(れっこう)で、そ
こから液体が網膜の下へ入っていくと網膜剥離になります。裂孔が出来ても必ず水が入るわけではな
く、網膜が萎縮(いしゅく)してできる裂孔を含めると、人口の数%の人が無症状のうちに裂孔を持ってい
るといわれています。

 さてご質問に対する答えですが、網膜剥離まで行ってしまったとのことですが、早かったのでレーザー
だけで治療ができたようです。レーザーでは裂孔の周りを固めて網膜を下の層としっかり癒着させ、水
が網膜の下に入らないようにしますが、剥離した範囲が広くなると手術が必要になります。レーザー治
療は飛蚊症自体を治すわけではありませんが、人間の眼は順応することができるのでだんだん気にな
らなくなるのです。細かい混濁は吸収されることもあります。

 慣れるのに普通は一カ月ぐらいをめどにしていいと思います。今後の注意として、はじめは眼球を激
しく動かす読書は一週間ぐらい避けたほうがいいでしょう。その後は眼をぶつけないことと、しばらくは定
期的に診てもらうことで安心が得られるようにしておくことが大切です。(秋山眼科医院院長 秋山健一)

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