◆葉酸 生活習慣病予防に効果

がんや痴ほう症との関連探る調査も/必要摂取量、米は日本の2倍

 赤血球や細胞の新生に必要なビタミンである「葉酸」。最近では葉酸に、がんや老人性痴ほう症の予防
効果があるのではないかといった視点での調査研究もさかんに行われている。米国では必要摂取量を日
本の二倍に設定しており、生活習慣病予防に積極的な摂取を呼びかけている。(平沢裕子)

 葉酸は主にレバーや緑黄色野菜、豆類などに含まれるビタミンBの一種。造血作用やからだの発育・成
長を促進するほか、皮膚を健康にするなどの生理作用がある。

 葉酸が不足すると悪性貧血を起こすことは以前から知られていたが、体にとって欠かせない栄養素とし
て認識されるようになったのは最近のこと。欧米の調査で、葉酸を必要量摂取することで、赤ちゃんの二分
脊椎(せきつい)や無脳症など「神経管欠損障害」の発症リスクを軽減できることが分かったためだ。

 もちろん、これらの病気の原因は複合的で、葉酸摂取が足りていても発症の可能性はあるが、米国やカ
ナダでは約十年前、日本でも昨年から、妊娠を計画中の女性に一日四百マイクログラムの葉酸摂取を呼
びかけるようになった。

 さらに最近では、がんやアルツハイマー病と葉酸の関係を探る研究が相次いでいる。

 ビタミン広報センターの末木一夫センター長は「以前から葉酸の構造を少し変えたものが抗がん剤の原
料として使われており、葉酸そのものにもがんの予防効果があるのではないかと、さまざまな研究が行わ
れるようになってきた」と話す。

 栄養学の学術雑誌「ヌートリション・レビウ」によると、米国で約九万人の看護婦に対して行った調査で、
葉酸を四百マイクログラム以上含むマルチビタミンサプリメントを十五年以上摂取した女性では、そうでな
い女性に比べ結腸直腸がんのリスクが75%減少したことが示されている。

 さらに、適量の葉酸摂取で、喫煙男性の膵臓(すいぞう)がんや、飲酒女性の乳がんのリスクが減少した
との報告もある。

 また、米のカリフォルニア大・デービスメディカルセンターのジョシュア・ミラー助教授が行った調査では、ア
ルツハイマー病患者百六十四人の体内の「ホモシステイン」が、病気のない高齢者に比べ高い値であるこ
とが分かっている。ホモシステインは、高血圧やコレステロールと同じように動脈硬化の危険因子の一つと
されており、この値に葉酸やビタミンB6などが関与しているといわれている。

 米国では血漿(けっしょう)ホモシステイン濃度の安定した水準を維持するために、必要な葉酸摂取量を一
日四百マイクログラムとしているが、日本ではその半分の二百マイクログラムに設定されている。また、日
本の食品成分表ではレバーやブロッコリーから得られる葉酸が欧米の二倍から六倍に換算されている。

 元女子栄養大大学院教授で内科医の安田和人さんは「葉酸は加熱によって相当量が失われるので、欧
米の数値の方が実質に近い値では。日米の必要量の差は、基準をどこにおくかの違いだが、葉酸はビタミ
ンB6、B12といっしょに摂取することで、動脈硬化に由来する生活習慣病の予防に役立つことが分かって
おり、積極的な摂取を心がけて」と話している。

         ◇

 ≪食品成分表の葉酸値の比較≫

          (ug/100g)

         日本 米国 英国

大豆       230   205   70

アスパラ(ゆで)   180  147  155

カリフラワー    94   66  66

ほうれんそう   210  193  150

ブロッコリー   210   70  90

鶏レバー     1300  770  590

豚レバー     810  163  110

牛レバー     1000  217  330

 (注)米国の鶏レバーは蒸し、豚レバーと牛レバーはいため煮のときの値