防衛庁のシンクタンクである防衛研究所は一日、中国、朝鮮半島などの軍事情勢を分析した
「東アジア戦略概観二〇〇一」をまとめた。朝鮮半島情勢について、韓国と北朝鮮との南北首脳
会談を評価しながらも、北朝鮮が外部との交流活発化に備えて国内引き締めを行い、大規模な
軍事演習を実施するなど、軍事力の維持・強化にも努めていることを指摘。また、中国軍が近代
化を進め、日本周辺における中国艦船の活動を活発化させていることに注目している。

 北朝鮮軍については、経済難の中、「九〇年代全体としてみた場合には、通常戦の遂行能力
は低下している」と分析。ただ「大量破壊兵器の保有あるいは開発を続けている」「炭そ菌など十
数種の生物兵器を保有している」と観測するなど、大量破壊兵器や弾道ミサイル、特殊部隊など
の維持・強化が続けられていることも指摘した。

 本来、主権国家がどんな予算を組むかは主権そのものであり、他国が口を出すべきものではない。しかし国防力に
関しては必ずしもそうではないことは、中国が常々、われわれに教えてきた。中国は日本の防衛力整備計画に対し、
あれこれの批判をし、ほぼ横ばいの来年度の防衛予算についても、中国軍機関紙などはアジアの平和と安定を脅か
すと論評している。

 われわれが疑問を持つのは、中国が一方で平和主義を唱え、米国土ミサイル防衛(NMD)計画を軍拡競争に火をつ
けると非難しながら、過大な軍備増強を続けていることに対してである。朱鎔基首相は五日の政府活動報告で、平和
な国際環境と周辺国との良好な関係の構築を強調すると同時に、今後も国防力の増強と近代化努力を続ける方針を
明らかにした。

中国への警戒心からアジア諸国は一九九〇年代に国防力強化に着手した。中国の軍備増強の加速は、アジアの
軍拡競争を招く。中国の自制を強く望んでいるのは、日本だけではない。

 わが国は、日朝交渉推進と称し、一九九五年から金正日政権に合計一一七万トンのコメを事実上無償援助したが、周知のように日朝交
渉も拉致の解決もまったく進んでいない。要するにコメをただ取りされただけである。

 こうなった原因は、金正日政権の本質を取り違えて、テロ政権にモノやカネを与え、国際社会に誘導、考えを変えさせるなどとおよそ見当
外れのことをいったりやったりしてきたからである。

 北工作員が、日本人をわが国の領土から暴力で拉致した。これ以上の主権の侵害はあるまい。二十数年前にわが国の安全がかくも踏
みにじられているのに国会で安保議論がなされるとき、なぜか拉致を踏まえたものがないのはどうしたことなのか。

 何度でも繰り返していうが、政府の最重要任務は、国家の安全と国民の生命財産を守ることだ。日本人が北朝鮮に拉致され、生死不明
になって、来年で四半世紀、二十五年となる。

 それなのに解決のめどすら立っていない。思い余った六十歳代後半・七十歳代の親達らが肉親救出のために米国に足を運ばなくてはな
らない。なんという国家であろうか。

金正日政権が米本土に届く大陸間弾道弾を所有していることは確実。日本に届くノドン中距離ミサイル約百基が実戦配備されていること
は新聞でも報道され、秘密ではない。このミサイルを迎撃するミサイル装置は米軍にも存在しないのだ。

 クリントン政権、金大中政権の誤った北朝鮮政策で、日米の安全がこのように脅かされることになった。

平和が半世紀以上も続いた結果、わが同胞の中には、こちら側さえ仕掛けなければ、日本は侵されないと妄信している人が少
なくない。そういう考え方を、私は空想的平和主義と名付けて批判し続けてきた。政治の世界でも、こちらが友好的であれば、相
手も友好的であるに相違ないという妄信がはびこっている。

ブレジンスキー元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は「日本は米国の保護領」と言い切っている。「日米同盟は片務的な条約であ
り、日本がもうけた金は国際機関に振り込み世界平和に貢献している使命感を抱いてもらえればいい。アジアの代表は中国」というのが米
国の趣旨だ。

軍事力が欠けている以上、戦略的外交はできない。欧州の歴史を振り返ると軍事力をもたない国がどんなにみじめになったかよくわかる。
日米安保の片務性を双務性にかえることが重要だ。