ウズベキスタンは、古代オアシス商業路の要衝、ソグディアナの中央部に位置している。

 ここは旧ソ連から独立して市場経済を目指す新興国だが、同時に古いシステムの上に乗る開発独裁国家でもあり、またそれゆえにいびつな社会変化への不満に乗ずるイスラム原理主義の浸透を恐れている(なにせ隣がアフガニスタンやタジキスタンだ)という、複雑な要素を持つ国だ。

 なぜこんなことを長々と書いたのかというと、国際交流基金の仕事でウズベキスタンへ講演に行った時、サマルカンド国立大学の副学長先生に、町のレストランで、一夜ごちそうになったことを思い出したからだ。

 高いブドウ棚がある中庭で、電球の明かりの下、副学長は、日本の湯飲みほどの容器になみなみと注いだウォトカを「国のウォトカがいちばんだ」と自慢しつつ、ぐいぐいとやる。あれ、モスレム(イスラム教徒)のはずなのに…と思ったが、そこはそれ、ロシア支配の置き土産だ。

 また、ありふれた日用品だというその湯飲みは(バザールで確かめたから間違いない)、色もデザインも、中国の青磁にそっくりだ。

 そしてテーブルに並んだ伝統的家庭料理は、もちろんイスラム国にふさわしく、羊の肉をトウガラシで煮込んだスープにめんが入ったもの。

 ウォトカと羊肉うどんとを、青磁もどきの食器でいただいたという、まさに中央アジア、ウズベキスタンならではの晩だった。

  (濱田英作 埼玉女子短大教授)