パリのギメ美術館へ行くと、その東洋コレクションの素晴らしさに、いつも驚かされる。いまはどうだか知らないが、昔は高さ一メートルもある日本の銅鐸(どうたく)に自由にさわれたし、階段の踊り場に無造作に置いてあるのが、ベトナムのドンソン式銅鼓だったりしたものだ。

 この美術館の基礎を築いたギメという人がそもそも恐るべき目利きだったわけだが、シルクロードに関していえば、ギメ美術館のもっとも重要なコレクションは、ポール・ぺリオによる、敦煌の宝物類だろう。

 ぺリオはフランス東洋学の泰斗で、漢文読解などはお手のもの、ライシャワー元駐日大使の先生でもある。この人が、敦煌で首尾よく大量の経典その他の文書を手に入れる話は、インディ・ジョーンズそこのけだ。

 このペリオと、イギリスのスタインの両名による収集が敦煌学という、シルクロード研究の最大の分野を開く基となったのだから、その功績ははかり知れないし、世界の学者にいまなお恩恵を与えている。

 とはいうものの、中国からすれば、これは「帝国主義者の略奪」、つまりは泥棒だ。たしかにギメに行くと、仏像の頭部だけが壁面にはめ込んで展示してあったりして、仏教徒としてはあまりいい感じは受けないものだ。

 もし日本の博物館にマリア様の首だけ欠いてきて展示してあったら、西洋人はいったいどう思うか、聞いてみたいところではある。

  (濱田英作 埼玉女子短大教授)