シルクロードとは、先学を総合すれば「古代より現代に至るまで、ユーラシア大陸を横断・縦断して東と西を結ぶ、経済および文化の交流の道」の総称だ。

 大きく眺めると東西をつなぐ経路として、北から順に、草原の道、オアシスの道、海の道の三本があり、南北を結ぶ肋骨(ろっこつ)ルートがこれに交差する。さらに加えて、地中海航路、北欧へ通じる琥珀(こはく)の道、インドに発する北伝仏教の道、チベット越えの道、それに東南アジアへの道などが接続している。

 では草原の道から見てみよう。ここはステップという草原地帯で、家畜とともに移動する遊牧民が生活する場所である。

 ところで遊牧民も、そのルーツは農耕民にあるらしい。乾燥ユーラシアの農耕は、基本的に麦作混合農業で、穀物栽培と家畜飼育のいずれが抜けても成立しない。ところが、寒冷化などのさまざまな理由から穀物栽培を放棄し、衣・食・住のすべてにわたって、家畜だけに依存する文化を作りあげた人々がいた。

 これが遊牧民で、かれらは家畜をふやすために広い草原を必要とし、はるか遠くまで移動を繰り返す。そこから騎馬の技術が生まれ、遊牧民はすばらしいスピードと機動力を手に入れた。このことが、文化や情報の伝達に、はかり知れない効果をもたらしたのである。

 つまり草原の道は、シルクロードのハイウエーといってもいいだろう。

(濱田英作・埼玉女子短大教授)