信頼できる情報源/モラル考える契機 札幌星園高等学校 高瀬 敏樹 先生

 新聞を授業に取り入れた最も大きな理由は、信頼できる情報をバランスよく入手できるからだ。

 昨今の世情から見ると、情報の収集ならインターネットが一番と考えられよう。たしかにスピーディーな検索方法、情報量の多さでは新聞もかなわない。だが信頼できる情報はと考えると断然、新聞の優位性が浮かび上がってくる。インターネットから得られる情報には偽りのもの、更新されていない古いもの、不正なものも多い。一番の問題は情報の質をだれも保証していないことにある。その点、情報の確かさで信頼される新聞の活用は、特に情報モラルの教育に有効であると確信している。

 生徒に情報化社会の陰の部分について考えさせるため、コンピューター犯罪やネットワーク犯罪に関連する記事を切り抜いて感想をまとめ、討論する授業を展開した。

 このころ話題になっていた幼女の臓器移植のための募金活動に便乗して、インターネットメールを悪用した詐欺事件があった。

 生徒たちの反応は「インターネットは楽しいものだと信じていたのに、偽の情報があるなんて考えたこともなかった」という素朴な驚きにとどまらず、「パソコンにそれほど詳しくなくても、簡単な操作で罪を犯してしまうのが怖い」「これからは個人情報を安易に教えないようにしたい」など、情報モラルについて考えを深めていく様子がうかがえた。

 特に、ネットワーク上ではその影響力を過小評価したり、相手が見えないこともあって、無意識のうちに犯罪の加害者や被害者になったりする可能性がある。そこで現実を実感させるために新聞記事をもとに考えさせたのだが、これは効果的な方法だった。

 「情報処理」の授業では、はやりの情報技術(IT)関連の記事を切り抜き、わからない専門用語の意味を調べ、考える授業を行った。

 すると出てくる、出てくる…。ターミナルアダプター(パソコンをISDN回線に接続するための変換装置)、DSU(ISDN回線を利用するときにターミナルアダプターと回線の間に置く装置)などと、用語解説のための用語にまた説明が必要だったりする。

 それでもBtoB(ビジネス・トゥ・ビジネス、インターネットを介した企業間取引)やBtoC(ビジネス・トゥ・コンシューマー、企業と消費者の間のネットワーク・システム)など、説明されればすぐ理解できて、しかも大切な多くの専門用語を新聞から学ぶことができた。

 技術革新の激しいこの分野では、現在の技術・知識を指導すると同時に、将来にわたって情報化の進展に対応できる能力や態度を育てていくことが大切だ。信頼できる情報収集の手段として、新聞の必要性はますます高まっていくことだろう。

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