取材を通じ出会い/地域の良さ再発見 北広島市図書館普及係 新谷 良文 係長

 壁新聞作りを通じ、地域の小、中学生に郷土を見つめ直してもらいたい−そうした願いを込めて「ふるさと再発見壁新聞コンクール」を企画し、三年目になります。新聞作りの過程では歴史や環境問題などの社会科学習、文章表現をはじめとする国語学習などが必要なことから、コンクール自体が子どもたちの自主的な学習の場を創造できるのではないかとも考えました。

 コンクールは千歳市、恵庭市、北広島市の図書館と市民が実行委員会を結成して実施しています。昨年は550人の小、中学生から240点の作品が寄せられました。三年目の今年も、すでに190点の応募があります。締め切りは来年二月九日。この冬休みを利用して、さらにたくさんの子どもたちが取材に、編集に頑張ることでしょう。審査会では、どんな作品が入賞するのか楽しみです。

 昨年は道新NIE委員会の協力をいただいて、正真正銘の新聞社デスクと子どもたちが一緒に壁新聞作りをしました。小学五年生が五人グループで街頭に出て、100人アンケートなど取材の苦労を積み、素晴らしい新聞を仕上げました。作品が出来上がってゆく過程を収めた「壁新聞作りVTRテキスト」を制作して三市一村の小学校に配りましたが、指導者たちには好評で、有効に活用されたようです。

 子どもたちがふるさとを見つめる壁新聞を作る時には、取材先の地域の人々といろいろな出会いが生まれます。これらの出会いが素晴らしいものであればあるほど、子どもたちの作る壁新聞は光り輝いてゆきます。そして、その作品を読んだ地域の人々は、さらに積極的に子どもたちの取材に協力し、良質な情報を提供しようとする。それを見て、私たちは、新聞が持っている「報道」の本質に気付きました。

 このコンクールは、子供たちの学習意欲や興味を陰で支える地域の人々の力と、チビっ子記者の純粋で素朴な主張が重なり合って、大人も子どもも互いに励まし合う地域社会のあり方を教えてくれます。

 「教育に新聞を」というNIEの実践は、地域の図書館も積極的にかかわらなければならないテーマだと思います。なぜなら、図書館も新聞も、共に社会の知る権利を支えるという点で、いわば仲間だからです。目的を同じくする両者が互いに連携して、未来の社会の担い手である子どもたちに報道を実体験してもらう。このコンクールは、これからの公共図書館のあり方を変えてゆく可能性を秘めているのではないだろうか。そんな手ごたえを実感しながら、子どもたちや地域の人々とともに、ふるさとを見つめ続けていきたいと思っています。

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