職員室前に各紙一面/興味広げる生徒 札幌市立陵陽中学校 斎藤 亮 先生

 NIE実践を始めて四年がたった。最初のころは、職員室前に「今日のトップ記事コーナー」を作り、六紙の新聞一面を掲示して、生徒に自由に閲覧させた。すると毎日のように新聞を見にくる生徒がおり、それが少しずつ増えていった。「もう少しゆっくり新聞を読ませてやりたいな」という職員室での話がきっかけで、二階の憩いの間(生徒が休み時間を自由に過ごせるスペース。パソコンも置いてある)にも新聞コーナーを設け、イスにかけてゆっくり新聞を読めるようにしたところ、コーナーはいっそうにぎわうようになった。

 新聞を通じて社会の出来事に興味を広げていく様子は、環境問題をテーマに新聞を使った授業を進めた三年の選択理科にもはっきりと示されている。授業で行った生徒へのアンケート結果から、その変化をたどってみよう。

 一年目、環境問題に興味を示す生徒は四分の一にとどまっていた。だが二年目、京都で国際会議が開かれ、地球の温暖化問題、オゾン層破壊の拡大、食糧危機など環境を取り巻く課題が続発したことなどから、関心を持つ生徒は半数を超えた。三年目になるとさらにダイオキシン問題、それにかかわるごみ処理問題、環境ホルモンと予想もしなかった話題が次々と出てきたためだろうか、七割以上が「環境問題について考えている」と答えた。

 今年は実践校としての活動から一応解放されたが、いまも「今日のトップ記事コーナー」には多くの生徒が集まり、新聞からさまざまな情報を読み取っている。三年の選択理科でも環境問題に限らず、新聞を見ての感想というかたちで、理科に関連する事柄を題材に生徒に考えさせる授業が続いている。テーマにあがった記事は臓器移植、ヒトゲノム解析、日本製ロケットの失敗など幅広い。さらにこれらのテーマに自分なりの見方を加えてそれぞれの意見としてまとめ、道新の読者の声欄「みらい君の広場」へ投稿している。

 最近掲載された投稿に、携帯電話の電磁波が心臓ペースメーカーの誤作動を招く恐れがあるとの記事から、地下鉄内での電源オフ呼び掛けの意味が分かったという一文があった。砂場の清掃機開発の記事から、微生物の世界のバランスに考えを広げていく生徒もいる。

 生徒たちはこの学習を通して、いま社会で起きているいろいろな事柄に対して自分の意見を持ち、発表することを学んだ。その文章も内容も、年とともに充実してきている。新聞という身近な情報源を、さらに上手に活用していってほしいと願っている。

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