技術革新の記事利用/話し合い活発に 札幌市立幌西小学校 斉藤 拓也 先生

 活字離れが指摘されている時代ではあるが、子どもたちが得る情報の大半が、実は文字情報だ。辞書や資料を利用した調べ学習はもちろん、さまざまな体験学習で得るデータも、ほとんどがパンフレットやガイドブックの文字、グラフを媒体としたものである。インターネットの検索も、電子メールのやり取りも、やはり文字情報が中心になる。そこで、知識を受信するだけではなく、それを活用し発信できるものとして新聞に注目し、NIE活動を展開していった。

 新聞は時間や場所に拘束されることなく、どのページからでも読めるし、何度でも読み返すことができるという利点がある。さらに必要な部分を切り抜き、整理・保管することも容易だ。紙面のカラー化が進んで、視覚に訴える記事も少なくない。継続的に読み進めることで、多様な事柄に対して、多角的なものの見方を育てる効果も大きいと思われる。

 具体的な例として、六年生の国語の論文「人間よ、宇宙人になれ 立花隆」の学習を挙げてみる。学習はパネルディスカッションで意見交換をすることから始めた。意見を述べる三人のパネリストを中心に、賛成、反対の根拠となる資料集めに入った子どもたちの手掛かりの多くは新聞だった。

 宇宙に関する技術の進歩は目覚ましい。リアルタイムで報じられる宇宙開発の記事は意外に多く、写真を含めて辞典やテレビでは得られない知識がたくさんあった。また、宇宙開発にはいいことばかりでなく、巨額の費用がかかるマイナス面もあることを知って、話し合いは一層活発になっていった。子どもたちはそうした情報を収集、選択した上で編集し直し、自分のメッセージとして発信するまでになったのだ。

 こうして「宇宙への進出」と「地球の開発」のどちらを優先させるかで盛り上がった議論は、単純に賛否を求めるのではなく、「宇宙を目指す科学の発展が身近な生活の向上に大きな力になる」という広がりのある結論にまとまった。

 自分で教材として見つけてきた記事を整理し、問題点をつかみとり、自ら発信する。それこそが、NIE実践だろう。新聞は情報の宝庫である。自分たちの生活や社会とのかかわりの中で情報活用能力を身につけることができる教材として、今後も新聞を有効に利用していきたい。

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