人生相談を試験に/進路指導にも有益 北海道士別商業高等学校 毛利 禎晴 先生

 社会科の教員になって13年。当然のことのように授業で新聞を活用している。理由は教科書などで取り扱われている統計資料や内容がタイムリーでないから。これらを補うのに、新聞は手軽で保存しやすい教材として健在だ。

 毎授業で新聞を使う実践に「The 現社」と名付けた切り抜きプリント学習がある。時事問題を把握させるねらいで「新聞を読んで現代社会を知ろう」と生徒に投げかけた。授業に関連したタイムリーな話題記事をプリントして導入に使ったり、夏冬の休みには自由に新聞記事を選択させ、感想や意見、疑問点などを書く「ニュースシート」を宿題としたりした。

 さて、生徒たちが選んだ記事は、地元の出来事や事件事故、スポーツの話題が多く、政治や経済に関するものは皆無だった。いわゆる硬い記事にどうやって興味、関心を持たせるかがひとつの課題でもある。ただ、以前はテレビ番組欄やスポーツ面しか見なかったのが、この授業をきっかけに一日一回は新聞に目を通すようになったという生徒も続出し、宿題という強制的な手段ではあったが効果が表れたと思う。

 定期試験には新聞の人生相談を取り入れた問題を出題した。「何ごとにも自信を持てず悩む15歳」とか「何の取り柄もない自分がつらい」といった訴えに相談相手として回答させるものだ。生徒は毎回、実に真剣に回答してくれたし、それぞれの個性が文章ににじみ出て、授業だけではわからない一面を見せてもくれた。生徒指導の上からもかなり有益な実践であると自負している。

 いま考えているのは「新聞の能動的な利用」。「読者の声」などの投書を活用して物ごとに対するさまざまな意見を紹介し、考えさせることで、社会に主体的に参加する力を育成したい。ひとつの試みとして北海道新聞夕刊の「NEWS クロスワード」を授業に取り入れているが、とても好評だ。クロスワードを解きながら、関連する新聞記事のワンポイント解説を加えていくと効果的であろう。

 こうした新聞を使用した授業に対する生徒の感想に「同じ事件なのに、新聞によって内容が違うのにびっくりした」というのがあった。新聞報道の違いに気付くことから、さらに正しい判断力を育てることに進んでほしいと願う。また「最近、テレビで見たニュースを新聞で確認するようになった」というのもあった。新聞の強みはこれである。授業に限らず小論文指導や進路指導でも、新聞の使用は不可欠であり有益だ。肩ひじ張らずに気軽に新聞を使っていきたいと思っている。

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