感想文で慣れ投稿/情報選ぶ能力磨く 札幌市立藤野中学校 宮武 基理 先生

 「テレビ欄は必ずみるけど、あとはたまにスポーツ面をのぞくぐらいかなぁ…」というのが、中学生が新聞にふれる日常の実態だ。インターネットや携帯端末が発達したといっても、「自分から接近し、文字を読み、情報を得る」のは、新聞に接する時と似たりよったりだ。

 社会科教師として、生徒たちになんとか新聞を読ませたい。いや読むまでいかなくても「親しませたい」という願いから、私はいくつかの実践に取り組んでいる。

 まず、学級オリジナルのスクラップブックを作る取り組みである。現在一年生は六クラス。新聞六紙が毎日配達されるNIE実践校の特色を生かし、毎日学級に異なる新聞社の新聞を配置する。そして、スクラップブック担当の生徒を日替わりで決め、自分で記事を選び、30字以上の感想を書くのである。期間中は、休み時間に新聞を開いて読む生徒の姿が見られ、仲間がどのような記事を選び、感想を書いているのか興味津々といったようすであった。

 情報を受け、整理することになれたころ、次のステップは新聞に投稿する取り組みである。今年は三年生の選択社会科で挑戦した。世の中の出来事に対して、自分なりの考えを持ち表現できるだけの実力を三年生は持っている。新聞を読んで興味を持った事柄を400字程度の文章にまとめ、毎週日曜、道新読者の声欄に掲載される「みらい君の広場」に投稿した。ちょうど開催されたシドニーオリンピックをテーマにして、開会式の印象から、アボリジニの人たちに対する差別について考えた生徒。喫煙について健康への害や周囲への迷惑を訴えた生徒などなど。関心を示したテーマはさまざまだが、生徒たちは無関心を装いながらも、その視点は鋭い。年が明けて三学期には、新聞記者をゲストに迎えたミニ講演会を企画している。NIE実践校には新聞の特色を生かして視野を広げるこんな特典もあるのだ。

 ちょうどいま取り組もうとしているのは「年末の十大ニュース選びに応募しよう」だ。北海道新聞は、年末に選ぶ「今年の十大ニュース」を、二年前から読者からのはがき投稿で選んでいる。その一年の大ニュースを道内、国内、国際の部門に分けて収録したものとともに応募規定が特集される。生徒たちは気の合ったグループごとに、何が今年の大ニュースだったか選ぶ。なぜ重要ニュースに選んだのか理由を話し合うことで、ニュースの影響度や広がりなどを学んでいく。つまり情報の取捨選択能力が楽しみながら身に付くすぐれた教材だと感じている。

 前任校で、全校生徒分のはがきを準備して応募した結果、13人が入賞するという幸運に恵まれ、校内でも大きな話題になった。

 どれもささやかな実践ではあるが、実践前に比べ、新聞が、生徒たちにとって身近なものになっていることは確かなようである。

戻る