ゲームで株式学ぶ/冷徹な判断力養う  札幌国際情報高等学校 松沢 剛 先生

 これからの世の中を生きていく高校生たちに必要な資質はCool heads but warm hearts−冷徹な頭脳と温かい心ではないのか。それが私のNIE実践での基本的な考えだった。あふれる情報を冷静に判断し、自ら考え、決める力は冷徹な頭脳が生み、自分と異なる他者、弱者をいたわる思いやりは温かい心から生まれる。それは教えるものではなく育てるものだと−。

 冷静な判断力を育てるねらいの実践のひとつとして、政治経済の教科で「株式学習ゲーム」を試みた。各人が1000万円の元手を用意したと仮定して一定期間、株式を売買し、終了時の所持金額で成果を競うシュミレーションゲーム。手掛かりは経済紙をはじめ各紙の商況欄で、生徒は株価の動向を見つめて真剣だ。

 株式ゲームには「学校教育になじまない」との反対や、大金を失うかもしれない株式投資をゲーム感覚で学校で教えることへの危険性も指摘されていた。だが、四カ月間の授業の結果はそうした懸念が取り越し苦労だったと教えてくれた。ゲーム終了後、240人 が答えたアンケートには七割以上の生徒が「積極的に取り組んだ」と興味を示してはいるが「1000万円あれば将来…」の問いに「是非株を買ってみたい」は三割弱。「損をする可能性があるので株は買わない」が七割を超えていた。

 全体の感想も冷静だ。「株の仕組みがよくわかったが、その危険性もわかった」「大きなギャンブルの一種。こんなことで経済が成り立っているなんて恐ろしいと思った」。そ して「自分のお金なら絶対やらない。まじめにコツコツためます」。

 現在取り組んでいるのは「コラムの要約」を中心に身近な話題を自分で考え、自分なりの考えを持つ訓練だ。いまの高校生たちはとにかく忙しい。朝六時に起き、朝食をとる時間もないまま登校し、授業が終わってからも部活動などに追われ、くたくたになって家に帰りつく。あとは寝るだけのモーレツ・サラリーマンと変わらない生活をしている生徒も少なくない。さらに自分を取り巻く環境に無関心な「自分さえよければ」と考える高校生が増えている。

 そうした中で、自分と社会との関係に自覚を持たせ、人ともかかわる中で自分を高めていく−。「温かい心」を育てていくために、これからも新聞は重要な役割を担ってくれると思う。

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