中国語紙を教材に/アジアの視点学ぶ 旭川市立啓北中学校 小林 直樹 先生

 国際理解教育にどう取り組んだらよいのか、選択社会科の授業を通して考えている。海外へ出向き、教材になりそうな資料収集をしたり、取材活動を試みたりした。外国人を招いて話を聞いたり、民族衣装を身にまとって生徒の興味を引き出したりする授業も実践した。そうした経験から、NIEが大きな手がかりになると感じている。

 今年は沖縄サミット、シドニー・オリンピック、そしてパラリンピックと、世界的イベントが続き、日常生活でも外国との距離が急速に縮まってきている。旅行で見聞を広めるだけでは、とうてい情報の量も質も追いつかない。「新聞を通して世界を知る」ことの有効性を再認識している。

 最初に試みた新聞を活用する授業は「中国の新聞を読もう」だった。諸外国を身近に感じる時代とはいっても、その情報や価値基準といえば、まだ欧米に偏りがちなのが実態だ。だが、アジアでは、「ルック・イースト」という言葉に象徴されるように日本が注目されている。ケーブルテレビのチャンネルを合わせれば日本のドラマが現地語の吹き替えで放映され、街には日本語のロゴ入りTシャツを着る若者があふれている。

 こうしたアジアの実情を理解させながら、現地の新聞に掲載されている日本の記事を通し、今、何が世界の話題なのかを確かめさせるのがねらいだった。

 中国、東南アジアを旅行した際に集めてきた現地の中国語新聞のいくつかを、教材として生徒に読ませた。中国語の新聞は、同じ漢字であっても、日本では使われていない文字が多い。

 それでも、見出しを見ながら日本に関する記事や読める単語を選び出させて、どんな内容なのかを予想させる。写真から内容を考えることもできる。広告欄にも着目して、どんなものが流行しているのか、現地の値段はいくらなのか、といったことも読みとらせた。

 生徒たちが首をひねって書き込んだワークシートには、漢字から連想した翻訳単語が並ぶ。例えば「星期五=金曜日」「馬星=シンガポール」「伝真=ファクス」「筆記薄型電脳=ノート型パソコン」「滑板車=キックボード」などと見当を付けるのである。

 「漢字ばかりの新聞を想像を働かせて読むのは楽しかった」「香港でも暮らしていけそう」…。生徒たちからは、そんな声の一方で「外国の新聞を見る前に、まず日本の新聞を読む心がけが必要だ」と反省もしっかりあった。

 政治はむろんのこと経済、スポーツなど新聞で外国のことが報じられない日はない。NIE実践校になったこの機会を大いに活用し、生徒一人ひとりに世界をより身近に感じさせる取り組みを今後も続けていきたい。

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