記事使い交換日記/感想、解説に工夫 札幌市立西岡中学校 小林 和陽 先生

 教員になって三年。学生のころから新聞を読むのが好きだった私は、生徒にもぜひ、この新聞の楽しさを伝えたいと思っていた。そして、新聞を楽しみつつ、社会的な知識の幅を広げ、思考力を養うことができるのではないかと考えて始めたのが、NIEの実践だった。

 実践最初の年、「NIE日記」と名付けた交換日記を始めた。まず各クラスに一冊ずつノートを用意し、当番の生徒に渡す。生徒は、自分が興味を持った新聞記事の切り抜きをノートに張り、感想を添え書きして私に戻す。感想についての私のコメントを書き入れた日記を、いったん記入者に返し、その生徒が次の生徒に渡す。こうしてクラス全員にノートを回していく。

 取り上げる記事は、スポーツ欄とテレビ欄を除外した。さまざまな記事を読んでほしいと考えて、感想が集中しそうなものを避けたのだ。そのためか、NIE日記を始めたころは、多くの生徒が日記を書くことを嫌がった。「面倒くさい」「興味がある記事がない」というのが主な理由だった。

 しかし、生徒はいざ自分の番が回ってくると、ノートいっぱいに感想を書くばかりかいろいろと工夫を凝らした日記を作り始めた。ある生徒はテレビドラマでよく使われる脅迫文のような感じに、新聞の活字をうまく切り張りしてインパクトのある見出しを作った。他の一人は記事を漫画風にして、事件をわかりやすく絵で説明するなど、ビジュアルに楽しめるものを作った。これは、次にノートを受け取る生徒の関心を呼び起こし、記事や他の生徒が書いた感想を真剣に読むようになっていった。

 やがて「このまえA君が書いていた環境問題の記事についての感想に私も同感だ。今日は続きの環境記事が載っていたので私の感想を書く」というように、他の生徒の日記を受けて、さらに発展させた自分の意見を述べる生徒も出てきた。時に、NIE日記が討論の場に変わるなど、生徒は自発的にNIE日記を多様化させていった。

 NIE日記が三年目を迎えた三学期、少し形を変えてグループ日記に取り組ませた。クラスが六人ずつの班に分かれ、班ごとに一つの記事を選んで各人それぞれに感想を寄せ書きし、その後、記事をテーマに討論するのだ。選んだ記事には「JALのニアミス事故」「東京・山手線電車事故で犠牲になった韓国人学生の告別式」「雪まつり開幕」など時事的なテーマが並んで、討論は大いに盛り上がった。

 新聞を、そしてNIE日記を、楽しんで読んだり書いたりする生徒たちはとてもはつらつとしている。生徒たちは自分で気付いていないかもしれないが、社会的な知識の増加とともに、考える力が着実に育っていることを私は実感している。

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