関心深い移植報道/命めぐり活発に議論 旭川市立西御料地小学校 上村 亮 先生

 いのちの大切さを学び、自然を守る環境教育を自身の大きなテーマと考えている私は、道内の先生方と協力した道徳実践活動の教材づくりなどに、これまでも重要な情報源として新聞を活用してきました。

 その中でも忘れられないのは、わずか一歳の小さな体で心臓と肺の難病と懸命に闘い、二月に亡くなった斉野朱里ちゃんについて話し合った学級活動です。五年生の授業には少し難しかったかもしれませんが、「日本の臓器移植について考える」がテーマでした。

 でも、朱里ちゃんについて意見を述べ合う子供たちは、予想以上に多くのことを知っていました。肺と心臓の同時移植を受けに米国まで行ったことだけでなく、なぜ外国で手術を受けなければならなかったのかについても、日本では年齢制限があったからと、おおよそは理解している子もいて、関心の深さがうかがえました。

 「朱里ちゃんを救う会」が呼び掛けた募金活動に始まる一連の道新の記事の切り抜きを読んだり、教師の解説を聞いたりして、これまでの経緯が詳しくわかるにつれ、子供たちの心にも命の重みが深く響いたようで、中には涙ぐむ子もいました。

 話し合いを進めていくうちに、脳死について子供同士で情報交換をしたり、臓器提供についての法律解釈に説明を求めたりと、活発な意見が飛び交います。やがて子供たちの意見は「自分の意思で臓器提供をしてもよい」というものと、年齢制限を定めた「今の法律のままでよい」の二つに大きく分かれました。

 「子供が臓器を提供してもよいと言うのに親が『だめ』と言うときも、その逆の場合も、親の勝手になってしまう。子供だって自分の意思を大切にしなければならないと思う」「十五歳未満でも、自分の体のことは自分で決めたい」など、自らの意思を尊重すべきだとする声。その一方で、「私のことを心配してくれているお母さんの考えを大切にしたい。自分の子の体を切られるのはいやだと思うだろうから」と、親の情愛を思いやるやさしさも示されました。

 小さな命の死に直面する重いテーマの授業でしたが、臓器移植や命をめぐる真剣な意見のやり取りに共通していたのは、「小学校五年生でも判断力は備わってきている。自分の判断を大切にしたい」という強い意志だったと思います。この日の話し合いは、子供たちの人生に大きな影響を与えていくことでしょう。

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