総合学習で壁新聞/製作ビデオに反響 別海町立上春別中学校 飯田 雄士 先生

 2002年度から完全実施となる新学習指導要領。その目玉は、小学三年から高校までの教育課程に位置付けられる「総合的な学習」の時間だろう。すでに、各学校でさまざまな試みが進んでいるが、本校では年間50時間を確保し、「環境と健康」のテーマに沿って課題解決学習に取り組むことにした。

 学習は生徒自身による課題選びから始まる。新聞、テレビ報道などを手掛かりに「疲労」「視力」「携帯電話」「アロマテロピー」「排ガス」といった課題が決まると、次はアンケート、インタビュー、実験など解決のための学習が続く。

 研究成果は表やグラフを織り交ぜながらわかりやすくまとめて発表するのだが、その過程で生徒たちはさまざまなことを学ぶ。アンケート依頼や礼状書きで社会的マナーを身に付け、まとめの段階ではパソコンでデータを処理したり、視覚に訴える資料作りや発表方法を工夫したりする。教科学習で得た力をフル活用するのだ。

 50時間に及ぶ学習の最後には、6−8人のグループで壁新聞づくりに入る。二年前から、夏休みの自由研究と校内弁論大会の内容を壁新聞にまとめ、コンクールに応募してきたが、自分たちが研究してきたことを校外の人たちに知ってもらうには、またとない機会だ。

 昨年の中学校かべ新聞コンクール道東大会で最優秀賞に輝いた「飛翔(ひしょう)」もそうした作品の一つだ。「朝食は超食!」を一面トップ見出しに立てて、朝食抜きで登校すると集中力が続かず、心臓にも負担がかかる−と警鐘を鳴らす記事は、全校アンケートから始めた。回答をもとに体温、体調、運動能力、記憶力、疲労度の五項目にわたって実験データで比較、分析した内容。このほかに、茶髪を取り上げた「中学生の染髪偏見」や、地域の基幹産業である「酪農事情」の記事もある。

 完成した一枚の壁新聞には、生徒たちの延べ何百時間という学習の成果が詰まっている。そして地域の人に読まれ、学校に感想が寄せられたりする。

 この春、卒業した「飛翔」の編集メンバーたちは、後輩たちに壁新聞づくりへの思いを託して「壁新聞製作マニュアルビデオ」をつくった。このビデオは全道から反響があり、要望にこたえて43本を配布した。後日、送られてくる礼状に多くの人とつながりを持てたことを実感し、喜びを味わったのは卒業生たちだけではなかった。

 「総合的な学習」は、まさに心豊かに生きていくための力をはぐくむ学習なのだ。

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