「有珠噴火」を学習/現地の報告聞き実感 札幌市立平岡緑中学校 東 岳史 先生

 NIE実践は今年、二年目を迎えました。最初の年から、総合的な学習や社会科の授業の中で新聞の活用を積極的に進めた結果「新聞から必要な情報を獲得し、自分の中で加工して表現する力」が、生徒たちに徐々に身に付きつつあるように感じています。

 普段、交流する機会がほとんどない人と接することができるのも大変魅力的なことです。とくに今年は有珠山噴火の現状について、現地で日々取材に駆け回った「どうしん有珠通信」の「記者」に講演していただくという願ってもない機会を得ました。

 有珠通信は噴火の被災者を励まし、大切な情報を伝えるために北海道新聞社販売局が発行していたミニコミ紙で、現地の被災者の方も取材陣に加わっていました。そのリアリティーあふれるお話から、新聞記事やテレビの映像が伝えるものとは違った生々しい衝撃を与えられたのでしょうか、生徒たちは、人ごとではなく、身近な出来事として感じるところが大きかったようです。

 授業は、生徒たちが関心を持った噴火に関する記事、情報を持ち寄って張り出すことから始めました。激しい噴煙の写真が伝える第一報、避難する被災者たち、避難所の生活、避難解除で帰宅できる家族と残る人たちの明暗…。さまざまな噴火にまつわる記事が黒板を埋めていきます。

 ひととおり噴火とその後の経過を学習したところで、現地で取材に当たった中村敏之さんに登場していただきました。洞爺湖温泉街で旅館を経営している中村さんのお話は、噴火直後の様子から不自由な避難所生活まで、日々の恐怖と不安と緊張がひしひしと伝わってくるものでした。

 「一時帰宅が許されて点検に帰ったが、ふろは火山灰で埋まっていた」「地殻変動で建物はゆがみ、壁には亀裂が走っている」「避難所に落ち着き、三日ぶりに銭湯に入ってようやく人心地がついた」…。そうした被災の現実を、生徒たちは息をのんで聞き入っています。

 「新聞やテレビのニュースではあまり実感がわかなかったけれど、被災した人の話を聞くと目や肌を通して自分が災害に遭ったように、情景が思い浮かんだ」。講演の後、代表してお礼を述べた生徒の感想です。

 新聞を教育に活用するNIE実践は、単に記事から情報を得るだけでなく、より広く知識を吸収する機会をつかみ、やがて自分の意見を発信していくための素地になる。そうした大きな可能性を、35人の生徒たちが現地の被災者に送った激励文から感じています。

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