日系人差別を調査/投書欄に積極投稿  札幌市立信濃中学校 天野 昌久 先生

 戦場の砂浜に流れた血の色は一つ−レーガン元米大統領が若き大尉時代、差別に苦しみつつ戦死した日系人兵士の慰霊集会で述べたという弔辞の一節です。後に大統領として日系人の名誉を回復する戦後補償法に署名する運命のめぐり合わせを伝えるこの新聞記事を読み返して、あらためて胸を熱くするのは生徒たちもきっと同じでしょう。

 新聞を通して人間の優しさ、温かさを感じ取らせたい。そうした思いを抱きながら、太平洋戦争時の日系人強制収容を授業で取り上げました。事前の調べ学習で新聞各社の記事データをあたり、夏休みを利用してワシントンの米国立公文書館に出かけて写真、文書資料を集めました。これらの事前学習を通じて生徒たちの心には日系人へのいわれなき差別に対する憤りが高まっていたはずです。

 授業の締めくくりともいえる共同発表の日、レーガン大尉の弔辞にまつわるエピソードを紹介したときの反応は劇的でした。生徒たちの心を占めていた怒りは、差別する側にも、これに反対し、抵抗する人が存在するという理解に変わったのです。新聞は、生徒の心に直接語りかけうる、時間や空間を超えても強く響かせることのできる教材であると思います。

 「人との出会い」も忘れられません。新聞記者を招いての講演やインターナショナルスクールのマクレーン校長との共同授業など、生徒も私も国際理解を学ぶ貴重な体験をNIEを通じて得ました。

 今の実践課題は普通の中学生の生の声を発信しようと北海道新聞の「みらい君の広場」への投書に取り組んでいます。「最近の出来事から心に残ったことを四百字以内にまとめよう」との課題で自由に表現させています。

 自分の意見が認められ、全道に紹介されることは生徒の自信につながります。月曜の朝、学級で紹介するとき、級友たちは掲載記事を食い入るように見つめ、音読にうなずきながらみんなで読み進める。そうした和やかなひとときを週の始まりに共有できるのは感動ですらあります。生徒の投書に感動し、お礼の手紙や新聞投書をしてくださった読者の力強い支えもありました。「卓上四季」で直接、生徒に語りかけていただいたこともありました。新聞との良い出会い、新聞を通じたさらにすてきな出会いを生徒に体験させてやりたいと願っています。

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