多い情報量を実感/有効活用が可能に 札幌市立美しが丘緑小学校 安達 正博 先生

 子供たちにとって、新聞は身近にありながら有効に活用できないものの一つではないだろうか。いまや子供たちの周囲にはマルチメディア機器が氾濫(はんらん)し、映像という形でいや応なしに視覚に飛び込んでくる。その中で活字主体の新聞に子供たちの関心を引きつけるのは容易ではない。なんとかして子供たちに新聞の有効性を実感してほしいとの願いが、NIE実践への動機であった。

 最初の取り組みは、新聞へ目を向けさせることだった。まず一枚の新聞を用意し、新聞社名やページ数などをクイズ形式で回答させることから始まった。やがてクイズは、子供自身の疑問にふくらみ、九月から三カ月間購読してきた六社の朝夕刊を活用した学習に発展する。

 「新聞の情報を数であらわそう」と始まった調べ学習で、あるグループは朝刊32ページを横につないで並べてみた。「6メートルちょっとあるから裏表で12メートルを超えるね」「見出しの数は大きな活字だけでも137本あるよ」「文字の数は朝刊全部で15万3640字だ」。紙面を並べたときの大きさや見出し、文字の数などを自ら調べることが、新聞の持つ情報量の多さの実感へつながった。

 次の段階は新聞の活用を日常的に行えるようにすることだ。国語「釧路湿原とタンチョウ」の学習にその姿がよく表れていた。絶滅の危機にある動物の存在を知った子供たちは毎日ファイルしてあった情報の中からトキの記事を見つけ、タンチョウと関連付けて絶滅危ぐ種探しを深めていったのだ。

 手掛かりは新聞記事、百科事典、そしてインターネット…。「あった、あったよ!」。目を輝かせて歓声をあげる子供たちの発見は百種類を超す絶滅が心配される動物たちのリストにまとまった。

 この二年間の実践が子供たちに与えたものは何か。まず、子供が新聞を毎日開くようになったことだ。休み時間になると、廊下の一角に設けられたワークスペースには、その日の新聞を何人かで広げる子供たちの姿があり、興味、関心のある記事を切り抜きファイルするようになった。

 そして、さらには集めた記事を情報として有効に活用できるようになったことである。これは、子供自身が新聞の良さを実感し、自分の学習に生かしたことにほかならない。子供が活字の世界に一歩踏み込み、新たな情報活用の手段を手に入れたといえるのではないだろうか。

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