記事の感想を比較/進路指導に有効 道教育大付属函館中NIEグループ 油谷 栄次 先生

 NIE実践三年目の昨年度、NIEグループは年間研究テーマに「進路指導にかかわる総合的な学習」をあげて、新聞活用法について研究を進めた。一年間の実践で得た結論は、「進路指導」の領域で新聞を極めて有効かつ多角的に利用できるということだった。

 スクラップ記事の新しい活用方法を探る試みは、「進路・職業」に関する記事の切り抜きをストックすることから始まった。技術一筋に生きる人々を追う連載、高齢化社会のさまざまな人間関係、女性問題、さらには芸術の分野も含めて雑多な内容の記事が、過去二年間の実践を通じて蓄積された。

 集まった切り抜き記事活用の次の段階は、生徒各自が関心のある記事を選んで感想を書くこと。ただし、選択用に廊下に張り出された切り抜きは、学年生徒数120人の半分、60件の記事が各二枚。つまり一つの記事に対して二人の生徒が感想文を書くことになる。それぞれの記事に二枚の感想文を添え、全部を再び廊下に張り出して生徒が自由に読めるようにした。

 この学習を通じて、同じ記事を読んでも、人によって感想や考え方に違いがあることを知ってもらいたかった。

 その次には、同一の新聞記事の切り抜きを全生徒分用意して配った。生徒たちは記事に対する感想を、配布された用紙の上半分に書いて提出する。この時、記名、無記名は自由とした。集めた用紙は無作為に再配布し、今度は他の生徒が書いた感想文への意見を下段に書かせた。

 再度集めた用紙はすべて廊下に掲示した。この作業で、同じ記事に関する感想文とそれに対する意見文が120種類並んだことになる。つまり、全生徒が自分の書いた感想文に対する「だれかの意見」を読むことができるのだ。

 「短時間でこんなに多くの人の意見を知ることができて驚きだった」「進路についての判断材料をたくさん得て、ものの見方が広がった」。生徒たちが述べた感想からも、これが効果的な学習だったことがうかがえる。

 新聞切り抜きの新しい活用法を探って試みた学習は、新聞記事の特徴である文章量の適切さと分かり易さが有効に作用して、これまでの新聞記事利用とは全く異なる反応が得られた。私たちの経験から、これは「使える手法」との思いを強くしている。

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