自主研修の参考に/データベース併用  前道教大付属函館中 NIEグループ代表 阿部 二郎 先生

 この春まで在籍した道教育大付属函館中で三年間のNIE実践を継続した。私たちNIEグループの活動は、一年目は教科指導中心に、二年目は「総合学習での自主研修」のための事前学習で新聞を活用する方法を、三年目には特別活動としての「進路指導にかかわる総合的な学習」での新聞活用を研究した。

 いま、これら実践研究のすべてを詳しく述べるスペースはない。いわば実践報告第一報として特徴的な事柄にしぼって報告する。

 函館中にはもう十数年にわたって実践されてきた独特の「総合学習」がある。体験的学習を含む自主研修活動と、道徳、特別活動などの学習活動を総合化するねらいで計画されたもので、一年生は「郷土函館」、二年生では「道南江差」、三年生が「東京鎌倉」を対象にする。すべてに宿泊と体験的学習を組み込み、生徒自身が決めたテーマにしたがって個別に事前の自主研修活動に入る。

 ここで新聞の活用だ。自分が訪れる土地や地域を知るために関心のある記事を切り抜いてストックしていく。何カ月か後には「貴重な知識の宝庫」になるわけだ。

 だが総合学習での新聞活用には大きな問題があることが分かった。事前調査活動の新聞切り抜きを始めた生徒から「江差や松前の記事がほとんど無いよ」「全国紙には北海道の記事自体があまり載っていない」といった困惑気味の訴えが相次いだ。

 新聞が地域に密着した地方版を充実させている関係から、地元地域外の調査学習で資料にしたい他地域の記事は入手が難しいのだ。

 これらの難点を補う有効な方法は新聞記事データベースの利用だった。新聞各社のデータベースは、最近、各地方版も充実させている。目当ての地方版記事を見たいと考えたとき、記事データベースを活用することで容易に可能になる。

 ただ、これを利用するには、たとえば一分間六十円ものデータベース使用料がかかったり、ネットワーク加入料や電話回線使用料など相当な費用負担を伴うという別の難点もまた大きい。

 いまや各種データベースの活用能力の育成は時代の要請であり、学校教育現場で無視できない事柄だ。そうしたなか、急速に普及するインターネットを利用して各種情報を入手する生徒たちには「インターネットの情報は絶対確実」と盲信する傾向が強い。情報提供者がだれなのか、出所はどこなのかの判断が欠落する傾向があるという懸念だ。

 とはいえ、新聞活用の幅を広げようとするとき、紙面と新聞記事データベースの双方の特性をうまく組み合わせつつ活用することは欠かせない要件だろう。その中から、これまでのNIEの実践では果たし得なかったような“新たな成果”を生み出せるのではないかと期待している。

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