身近な地方版から/テーマは自発的に 音更町立木野東小学校 阿部 英一 先生

 21世紀が間近に迫り、「情報化社会」と呼ばれるいま、子供たちをとりまく環境も大きく変わり始めています。これだけ情報があふれる世の中なのに、地域や社会に対して興味、関心を示さない子供たちが増えているのではないか…。私が新聞を活用した学習に取り組み始めたのは、このように感じたからです。

 「ラッキータイム」−私が最近、毎朝の楽しみにしている時間です。「地域や社会の出来事に興味を持ってほしい」「発表力や表現力が少しでも高まれば」という願いから、学級で新聞記事のスクラップ活動に取り組んでいます。子どもたちが前もって調べておいた記事を、自分なりの感想を加えて朝の会で発表するのです。

 小学二年生には、文字が小さく漢字が多い新聞に触れるのは難しいのではないか、という不安もありましたが、スポーツや小学生向けの記事、自分たちが住む音更町や十勝地域の記事から始めることで、少しずつでも興味を持たせたいと考えました。

 開始当初はどうしても教師主導の作業になりがちでしたが、それは徐々に変わってきました。

 クラスの一人は「生き物についての記事」を調べ始め、またある子は「写真がきれいな記事」を選んでいきます。別の一人は「同じ学校の友達が載っている記事を探そう」と、地方版を丹念にあたります。それぞれが自発的にテーマをもって新聞を調べるようになっていったのです。中には、個人的にノートを作って準備を進める子さえ出てきました。

 やがて「自分もやってみたい」「この目で見てみたい」「そこに行ってみたい」「こんなことがあって驚いた」など、自分なりの考えも素直に表現できるようになりました。オリンピックの柔道の表彰式で、選手の帯についているマークを見て、「テレビCMに出てくるあの会社」と気付くなど、奇抜な着眼に驚かされることも度々ありました。

 また、発表を聞いた子供たちからは、「へえー、そうなんだ」「よく調べたね」といった、感想や評価が聞かれるようになりました。

 「ラッキータイム」を通して、子供たちは地域や社会への興味を深め、発表力、表現力も確実に伸びてきたと実感します。

 スクラップを始めて三か月。いろいろなことがわかって「ラッキー」という意味で、「ラッキータイム」と名づけたこの時間に子供たちが得たものは、大きな財産になっています。

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