北大生の元気と北海道の元気

  いつもこの欄では、活字で書けない本音の議論をしているつもりだが、今回は私にとっての最大の悩みである大学教育と地域の関係について考えてみたい。一 応北大は「旧帝大」の一員で、一応権威をもっていることになっている。しか し、こと法学部の教育に関してはあまり威張れたものではない。教育の成果を何で評価するかについては議論の余地があるが、とりあえず司法試験合格者数は重要な指標である。今年は、北大出身者はわずか3名。200名を超える東大と比較することはもとより無理だが、同じ旧帝大で学生定員も同じような東北、大阪、九州の各大学は、どこも20名前後の合格者を出しており、教員としては肩身が狭い。

 原因は、もちろん法学部の教育体制にあるのだが、学生の意欲という点で他大学、あるいは他地域と違いがあることも否定できないと思う。要するに、北大には向上心がある学生が少ない。民間企業への就職が相対的に恵まれているため、あえて厳しい勉強に耐えて難しい試験を突破するという意欲を持った者が少ないのである。

 私は別に、自分が教えている学生を非難したいわけではない。高校の先生方と話をしてみても、最近は進学に関する情報があふれ、能力に見合った大学を周囲から勧められ、自分も納得して選ぶ傾向があるとのこと。必死で頑張ってより難しいところを目指すというのははやらないそうである。そういう風にして大学に入った若者は、自らの分をわきまえて職業選択を行う。その結果、北大からは「大志」は消えて行くのである。

 また、北海道という場所の雰囲気も、フロンティア精神を鼓舞するよりは、お山の対象で自足することを促しているように思う。私自身、北海道はとても住み良いところだと思う。しかし、その居心地の良さが現状への安住を生むということもできるだろう。

 また、北海道は独占企業が多いところである。役所や電力はいうに及ばず、大学、新聞、金融など北海道を支えるといわれてきた組織は、どこもライバルをもたなかった。しかし、いま拓銀が消滅し、北海道のトップであることで安閑としてはいられない時代となった。北大にとっても、道新にとっても、拓銀の運命は他人事ではないはずである。私の見るところ、学生に元気と意欲を喚起することと、地域社会に元気を回復させることとは一体の作業である。