北海道を日本のスコットランドに

 景気の低迷は相変わらずで、道内でも暗い話題が多い。こういう時こそ、次のフロンティアを探す前向きな姿勢が必要だろう。前回は、映像ソフトを北海道の産業に育てるという話をしたが、今回は北海道を日本のスコットランドにするという私の夢を語ってみたい。

 私がスコットランドに注目するのは、専門の研究テーマである地方分権から出発している。昨年の政権交代を契機に、英国では大幅な地方分権が実現し、内政面に関してはスコットランドは独立国に近い自由を獲得することとなった。この仕組みがポスト開発庁の北海道にも応用できるというのが、研究上のテーマである。

 こういう堅い話は別の機会に譲るとして、文化や暮らしなどのソフト面でも、スコットランドを北海道に移植してみたいと思うのである。まず気候風土が似ている。ニッカウィスキーの創始者が、スコットランドで修行して、日本でディスティラリーを作ろうとしたとき、余市町がもっとも適していたということで、工場が作られた。北海道もスコットランドも、島国の北のはしにあり、冷涼な気候と森、湖などの自然に恵まれている。畜産、漁業などの産業構成も似ている。ゴルフや釣りが盛んなところも似ている。スコットランドも北海道と同様、経済基盤が弱く、今までは中央政府からの持ち出しに依存してきた。

 しかし、昨年そんなことにはお構いなしに、住民は分権を選択した。住民の郷土に対する強い愛着と誇りが、分権の原動力であることはいうまでもない。他方、農業、観光、北海油田開発、企業誘致などの経済基盤の強化も進んでいる。この教訓を北海道に当てはめれば、いろいろな手がかりが見えてくるはずである。たとえば、スコッチ・ウィスキーやスモーク・サーモンに代表されるように、自然が与えてくれる恵みを生かし、人間の技術を加えることによって一つの食文化を作り出すことなどは、北海道にとってすぐにでも取り組める課題である。

 これからは、農業予算もそのような技術の開発に向けるべきであろう。旨いものを食べ、旨い酒を飲み、自然の中で心身を解放する。人間にとってもっとも根元的な欲求を充足する場所は、イギリスではスコットランドであり、日本では北海道である。スコットランド人の生きる知恵を学ぶところから、北海道の自立は始まると思う。