衛星多チャンネル時代と北海道
拓銀破綻以来、北海道の経済については暗い話ばかりである。規制緩和、市場経済の重視ということは、非効率的なものを淘汰することと同義であり、国土の均衡ある発展や護送船団という仕組みの中で守られてきた北海道の経済が寒風にさらされることは、必然の成り行きである。
北海道を日本列島の北の辺境とだけしか考えないのであれば、日本全体に弱い者をかばう余裕がなくなる時代には北海道に未来はないということになる。しかし、北海道は遅れているという意識を抜け出すならば、いろいろなビジネスチャンスが広がるはずである。たとえば、衛星多チャンネル時代は北海道に新しい産業の機会をもたらすのではなかろうか。
近い将来衛星テレビ時代が到来すれば、何十ものチャンネルを見ることができるようになる。そうすると、映像ソフトは圧倒的に不足する。現にNHK衛星テレビは外国から買ったスポーツや映画が売り物である。その傾向は今後も続くに違いない。そこに、一つのチャンスがある。
北海道は東京、大阪以外の地方としてはテレビ番組の制作能力が飛び抜けて高いところである。私が東京に住んでいた頃、北炭夕張新鉱の事故をあつかった「地底の葬列」(北海道放送制作)という番組を見たとき、言いしれぬ感動を覚えたことを思い出す。また、札幌テレビには生活保護行政を鋭く分析した傑作「母さんが死んだ」がある。これだけの秀作を生み出す民放が集まっている場所は、東京、大阪以外には北海道しかないと思う。
また、北海道には自然環境など映像の素材となるべき財産がたくさんある。映像ソフトの需要が爆発的に増える時代に、番組の制作を北海道の新しい産業に育てていけるのではないだろうか。北海道のマスコミ全体が、一つの産業を作り出すという観点からもっと積極的に行動を起こして欲しい。
私がテレビに出ると、北海道の学者が全国的なメディアで政治を論じるところに面白さがあるとよく言われるのだから、このフロンティア・アイのコンセプトを映像化して、報道プラスコメントのバラエティ番組を作ることだってできるのではないか。
そんな番組誰が見るかだって?多チャンネルの時代は視聴率を稼ぐという発想ではなく、ある程度の固定的な視聴者をつかむことが必要である。やりようによっては、結構需要があると思うのだが。
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