≪絵と文部門≫

大賞三席(北海道新聞社賞)

生と死

藤本 倫佳(ふじもと ともか)=北海道北広島西高等学校2年

読んだ本:《星になった鮭 楡木啓子/文(響文社)》

 「私は我が子たちが生まれてくる前に死んでしまう。どうか、少しの間だけでいい……子どもたちが元気に海へ旅立つ日まで生かして下さい。」そんな一匹の鮭の、ひたむきな愛の祈りを聞いたことは、私は今まで一度もなかった。
 鮭は川で生まれ、海に旅立ち、再びその川に帰ってきて卵を産み死んでいく。DNAに刻み込まれているのだ。誰かに教えられたわけでもなく、本能の一部として存在している。そんな死を理解しているからこそ、子孫を残すのだと私は思う。
 しかし、ある一匹の鮭は思った。我が子は無事に生まれ、海に行けるのかと。その鮭の我が子を思う愛情は、人間以上の何かを感じさせた。それは、我が子の成長を十分に見届けることが出来ないせいだろう。
 本の中の一匹の鮭は、卵を産んだ後も我が子のために生き続け、外敵から卵を守った。いつ死んでもおかしくない中で外敵から守ることは恐ろしく、鮭の必死さが伝わってきた。
 そんな中、人間の子が鮭を見つけて「かっこわるーい!」と口々に言う。何故、我が子を守りぬくために生きることを馬鹿にするんだ。生きる大切さ、辛さを知らないくせにそんなことを言う人間の子に私は無性に腹が立った。しかし、一人の少年が「あれは……かっこわるくないよ」と呟いた。その少年にはきっと鮭の必死さが伝わっている。命の大切さを知っている。鮭は少しでも感じただろうか。そのような思いやりのある言葉が、鮭に届いていてほしいと私は願った。
 本書を読んでいると、生きることの大切さと、すぐ目の前にある死のことについて考えさせられた。死に向かって生きているからこそ今ある生を大切にする思いを沁み沁みと感じた。「生きているものは死んでしまうと星になって、空から見守っているんだよ」と、母が幼い私に言っていたことを思いだした。この鮭もそうあってほしいと私は祈った。

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