「にいさん」を読んで
読んだ本:《にいさん いせひでこ/作(偕成社)》
私はこの本を読んで、詩のような物語なだけに、難しく、何を読者に伝えたくてこの本を書いたのか、そして、何よりもこの「にいさん」は誰のことなのか、なかなか理解することが出来なかった。作者が何を訴えたいのか、又、私の心に何が伝わってくるのかを知りたくて、何度も読み返してみた。
素晴らしい才能と並外れた感性を持ちながら、当時の世の中ではまったく認められなく苦悩するゴッホと、それを必死になって支える弟のテオの兄弟愛について、強烈な印象として私の心に残ったが、このような素晴らしい兄弟愛が現実にあることを知り、驚きと同時に衝撃も受けた。
その要因について色々考えてみた。生まれ育った土地、気候、自然、時代や家庭環境がその背景にあるのではないかと思うが、何よりもゴッホが誰とも妥協せず、あるがままの姿で絵を描き続け、「光と影」「生と死」を見つめ、もがき苦しみ続けたのである。そして、一枚の絵も売れず、世にまったく認められることがなかったゴッホを、画商である弟のテオだけが、兄の才能を信じていたのであろう。唯一の理解者であったテオは、経済的にも精神的にも全ての面で兄を手助けし、兄とともに世の中と戦い、そして兄と一緒になって絵を描き続けていたのかもしれない。
まさしく「二人のゴッホ」だと思った。
兄の死後、テオがオランダの母に宛てた手紙の中の言葉、「兄さんは、ぼくのすべて、ぼくだけの兄さんだったのです」に全てが言い尽くされていると思った。
そして、テオもゴッホの死後、六ヶ月程で後を追うように病死するのである。本当に兄弟愛の強い絆を感じさせられた。
そしてこの無償の愛を通じて、私も改めて家族愛について考えさせられ、身近な人達への思いやりや感謝の気持ちを持つことの大切さを痛感した。