*ユルリ島*野生馬たちの楽園
 眼下に広がる草原の緑がまぶしく、野生化した馬の群れが悠々と草をはんでいた。その姿をとらえよう、とヘリコプターを旋回させると、飛行音に驚いたのか、黒光りする体をひるがえして一斉に駆け出した。根室市郊外の無人島・ユルリ島は野生馬たちの楽園だ。

 夏場に漁業者が島へ渡り、コンブ漁をしていたのも今は昔。最盛期には番屋六軒が並んだが、動力船の普及で30年ほど前に姿を消した。馬たちはコンブ運びに使われた作業馬の子孫で、持ち主もはっきりしているという。

 島で生息しているのは20頭あまり。周囲8キロに満たない小島で頭数がこれ以上増えると、えさを求めてがけから落ちる馬が出る恐れもあるため、持ち主が間引いている。

 「自由な暮らしをさせても、死ぬのを見るのは切ないから」と、地元漁業者は話す。楽園はその温かな心で守られている。


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