道新立ち読みコーナー
 

矢野直美著
定価 \1,785
絶版

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北海道列車の旅 昔から列車の旅が好きでした。

 初めての一人旅は小学4年生の春。列車で祖父母の家へ出かけました。父に札幌駅まで付き添われ、自分できっぷを買いました。ドキドキしながら滝川まで一枚、とお願いすると、男ですか? と聞かれました。私は慌てて、いいえ女です、と答えました。

 ぷっ、と窓口の人が吹き出し、横では父が大笑い。窓口の人は笑いながら、女の子一枚ですね、と言ってきっぷをくれました。つまり私は、大人ですか? という質問を、男ですか? に聞き間違えたのですね。この「女一枚」事件は、今でも我が家の笑い話になっています。

 あの春の日。子どもの一人旅だったせいか、乗客の方々や乗務員さんにとても親切にしてもらいました。窓側の席を譲ってもらい、お菓子をいただき、滝川までの停車駅数を教えてもらったり。窓の外には水色の空と真っ白な雲、緑いっぱいの草むらが広がり、土の匂いを感じました。その思い出が、列車旅行の原風景になっているような気がします。やさしさと笑顔、沿線を彩る草花たち、季節の匂い、車窓を流れる見知らぬ町の風景。大人になった今も、列車っていいなぁ、としみじみ思います。

 その気持ちを胸に、2000年の夏から翌春にかけて、北海道の全路線に乗車してきました。車内や駅頭では、たくさんの人々の笑顔と歓声が揺れていました。通勤通学の乗客をはじめ、家族連れや友人グループ、鉄道ファン、イベント参加者、客室乗務員の方々。最近ではSLやノロッコ号、お座敷車両、バーベキューカーなどが登場し、列車旅行に新しい楽しみを加えてくれます。

 1880年に開業した北海道の鉄道は、多くの消長をたどって現在15路線が残されています。このまま廃線を迎える事なく、いつまでもタタンタタンと列車の旅を楽しめることを願いつつ、一年に渡る取材を終えました。

ただ今取材中
ただ今取材中。釧網本線
駅弁撮影中
苫小牧の名物駅弁を撮影中

 列車の旅が好きで始めた取材なので、鉄道のルールというか専門的な知識は乏しく、寝台車に乗る時にホームで・・・・・を脱いだり、自動ドアを必死に手で閉めようとしたり、子どもの頃と変わらないミステイクを繰り返しました。膨大な鉄道用語も「?」の嵐ですから、小学生向けの学習図鑑で学ぶことから始めました(そして今も「?」は果てしなく続いています)。そのため、原稿を進めていく際にはJR北海道の方々、特に総務部報道グループの鈴木岳史さんと松田道規さんには多大なご助力をいただきました。

 また、膨大な写真を1冊の本にまとめてくださったブックデザイナーの国見煕さん、北海道の自然や鉄道知識については北海道新聞社図書編集部をはじめ、仕事上の先輩である東谷史郎氏、友人の佐藤臣里カメラマン、イラストレーターの鈴木周作氏に多くのご助言をいただきました。本書と同じテーマの写真展でご協力をいただいたクリエイトフォトギャラリーのスタッフの方々にも、感謝いたします。

 最後に、見ず知らずの人間(私のことですね)から向けられた質問やカメラに、ステキな笑顔で答えてくださった方々に心からお礼を申し上げます。いつの日にかまた、旅の空でお会いできることを楽しみにしています。
 たくさんの方々のご協力をいただきました今回の書籍で、列車旅行の魅力を少しでも伝えることができましたら、とてもうれしく思います。

 2001年 夏 線路が続いていくことを願いつつ 矢野直美(「あとがき」より)


峠越えが続く山線にSLロマン復活(函館本線)  ・・・P100
小樽余市海岸からニセコへ SLで行く高原リゾートの旅  ・・・P105
 
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